ばおわー旅行記

自転車旅の備忘録

色を取り戻したくて…夏 in 奥秩父【二日目】

おはようt…!今日はいろいろ秩父を観光しよう!ということで朝9時に出発。昨日洗ったユニクロのポロシャツがまだ乾いてなかったけど、まぁ走ってるうちに乾くやろと思って濡れたまま出る。天気は快晴。天気予報ではずっと曇りの予報だったけど、こっちのほうが夏っぽくてよい。今日は暑くなるやろなぁ。水分補給しっかりしよ!

まずは「あの花」の聖地巡り。一端のアニオタを名乗るには聖地巡りはかかせない、いわばさんまの塩焼きについてくる大根おろしのようなものである。砂に書いた名前、どこ行ったん?めんま改めぷいちゃ探しの旅である。いつでも捜しているよ、どっかに君の姿を♪とりあえずまずは有名な旧秩父橋へ向かう。

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アニメと構図もまんまである。今まで数多のアニオタがここへ来て、あるはずのない世界に想いを馳せ、そして現実に戻され、散っていったのだろう。そんな名もなき人間の掬い取られない想いが、橋の下の川のうたかたとなって消えてゆくのである。何言ってんだ俺は。

ここにもいなかったから今度はけやき公園に行ってみる。ここは「”ゆきあつがあ○るに告白するシーン”をつるこが見てしまう場面」として有名らしい。住宅地の中にあって非常に見つけにくかったけど、けやき公園発見!

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ここも構図がまんまである。しかし中に入ってみると品のない落書きだらけで少々残念だった。

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全くセンスのかけらもない。これがあ○るって落書きだったら多少は評価したかもしれない。やっぱりここにもいない。

次は羊山公園へ行く。ここはぽっぽが秩父の街並みを見ながら黄昏ているシーンとして有名なので、僕も黄昏てみた。

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これは向かいにベンチがあったので、そのベンチの隙間に何とかスマホを挟み込んで、角度を色々調整して、あーでもないこーでもないといいながらなんとか撮った写真である。一人で朝からこんなことしてると本当に孤独を感じたので、その孤独が背中ににじみ出た良い写真だと思う。

他にもここさけの聖地の大慈寺や、御花畑駅周辺などをぶらついたけど、やっぱどこにもいない。ぷいちゃ、どこ行ったん?急行待ちの踏切あたりにいないかな。こんなとこにいるはずもないのに♪

聖地巡りはこの辺にして、今度は廃村を訪れることにした。この前奥多摩に行った時も、廃墟に行って夢の跡を見てきたけど、やっぱ僕はそういうのが好きみたいである。表層を着飾った観光地とかよりも、その裏側にあるものにどうしても心惹かれるのだ。きれいに咲く桜の花より、散ってしまった桜に何とも言えぬ風流を感じるのである。奥秩父には多くの廃集落が存在しているらしく、そのうちの一つ、岳集落という廃村に行くことにした。ここはとあるホラーゲームに登場する集落のモデルとなったところらしく、山の奥には十二社神社という神社があるらしい。三峯神社に行く前に、山の奥のこの神社に参拝しようと思い、少々おじけづきながらも出発!

十二社神社は秩父から9kmほど離れており、浦山ダムの近くにある。ダム周辺は本当の山で、こんなところに集落があったなんてちょっと考えられない。まぁ交通の便とか不便だから人がいなくなったのだろうけど。人っ子一人いない暗い山道を走っていると、今にも熊とか出てきそうで怖い。実際、熊出没注意!て看板があったから本当に出るんだろう。もし本当に出たら為すすべがない。こんなとこで死んだらしばらくは誰も気づかないだろうなぁ。

暗い山道では木漏れ日だけが癒しである。緑が深い。セミがうるさい。ひぐらしが鳴いている。ちょっとふりかえったら「嘘だっっ!!!」ビクッ(゚Д゚;)って斧振りかざされそうである。暑さで汗が吹き出しながら走り続けていると、急に視界がぱあっと開けた。どうやら山の頂上付近についたようだ。見渡せば山、川、空、雲、太陽。くーっ!これだよこれ!こんなビビッドな夏を俺は求めていたんだよ!ビビッドレッドオペレーション誰もいないし疲れたので、そのまま道路に寝そべって空を仰いでみた。飛行機雲が青を切り裂いている。なんかよくわからない形の鉄塔が無駄な存在感を放っている。こんな場所に一人で来ていると、若きウェルテルの悩みなどシャボン玉~♪である。しばらくそのまま太陽と向き合っていると、「ブオオオオン」と大きな虫が顔のそばを通っていった。よく見るとアホほどでかいオオスズメバチである。こんなとこで刺されて死んだら悲しすぎるのでダッシュでその場を離れて先を急ぐ。といってもそこから先は自転車が通れないような山道だったので、徒歩で神社に向かうことに。

山の道は険しく、暗い。視界にセミが10匹くらい飛んでおり、ビクビクしながら奥へ進む。こんなとこ夜に来たら本当にチビってしまう。虫を払いながら奥へずんずん進むと、途中でなんとも雰囲気のあるお地蔵さんがいた。

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ネットでもあったけど、有名なお地蔵さんらしい。その昔、ここにあるお地蔵さんの1つが盗難にあい、その祟りなのか、ここで山火事が起こったらしい。原因は放火で、犯人は逮捕されたらしいけど、今でもそのお地蔵さんは行方不明で、返してくださいという張り紙があった。よくも盗むなんて罰当たりなことができるもんだ。

ちょっと進むと、見えて来た。夢の跡が。

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今にも倒壊しそうな家屋。生活用品や何やらが、崩れかけた木材と混じって雑多に放置されている。

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忘れ去られた想い。

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形あるものはいつかなくなる。僕のカラダも、想いも、いつかこうして朽ちていくのか。それとも...

 

廃墟を通り過ぎると鳥居が見えて来た。十二社神社だ!山奥にひっそりと佇む姿はより神聖な感じがして良い。こんなとこ滅多に人来ないんやろなぁ...と思ってたら...なんと人がいた。神社の脇に何やら新しい社か何かを1人で組み立てている男がいた。大工さんかな...せっかくだから誰もいない方が雰囲気でて良かったのに...と思いながらも、いつものように世界平和を祈願して帰ろうとすると、「何しに来たんですか?」と呼び止められた。びっくりしてしばらく立ちすくんでると、「賽銭入れないってことは信仰じゃないんでしょ。」と割と強い語気で言ってくる。えええ。何でそうなるの。確かに普段お賽銭はあまり入れない主義で今回も入れなかった。だけどそれは神の世界にお金の概念なんかないはずだと思うからである。信仰と金が結びつくとロクなことにならないのは歴史が証明している。何度も言うように神社は個人の願いをする場ではなく、お金の額によってご利益が上がるなんて考えは荒唐無稽だ。反論したかったけど、グッとこらえて話を聞いてみる。男は「ここに来たのは何か他の理由があるんでしょ。」と言う。どうやらここがモデルとなったホラーゲーム関係で来た人と勘違いしたようである。そんなゲームやったことないし、ちゃんと事情を説明すると、その男もわかってくれたようで、申し訳ないと謝ってくれた。彼はおそらくここの神主さんだろう。話を聞いてみると、そのゲーム関係でここを訪れる人は結構いて、そういう人はお賽銭を入れないのだそうだ。また防犯上からも気をつけるようにと警察に言われてるらしい。そういうこともあって、最初僕を見て、威圧的な態度を取らざるを得なかったのだろう。実際さっきのお地蔵さんが盗まれた件もあるし。お賽銭のくだりについてはモヤモヤ感はあるけど、まぁ現実問題として神社の運営費とかも必要だろうから、彼の気持ちも分からなくはない。たしかにお賽銭の意味合いをもう一度考えてみると、日々こうして元気に過ごせることへの感謝という意味あいもあるから、その部分が自分には少し足りなかったかなという気持ちも生まれた。彼の言葉によって、客観的に自分の行動を振り返るきっかけをくれたということで、これも神の思し召しなのだろうと考える。だからこれからはできるだけお賽銭入れることにしよう。うん、そうしよう。

さて、歩いて来た道を戻りもう一度自転車にまたがる。お昼を食べてなかったし、この辺は食べるとこもないような山だから、もう一度秩父駅周辺まで戻ることにする。どうせなら秩父名物そばを食べたくて、食べログで有名そうなとこを探して行ってみる。ところが目をつけてたとこが昼2時くらいだというのにすごい行列で、この暑さの中並んで待つのは嫌だったから適当な空いてそうな蕎麦屋で天ぷらそばを食う。うん。普通のそばだ。まぁ腹を満たせればそれでいい。もぐもぐ。食べ終わると時間は昼の3時で、まだまだ秩父観光できそうだったけど、もうそんなみるとこなさそうなので予約してたゲストハウスに向かうことにした。ここは三峯神社から1番近い駅である三峰口駅の近くにあり、美しい渓流が眺められるっぽいので楽しみ!

17時まえにはゲストハウスに到着、入るとオーナーが掃除をしていて、僕が今日のゲストで一番乗りらしい。まずは汗を流したかったのでシャワーを借りる。風呂場がなんとも雰囲気あってアガル。汗を流した後チェックインして、今夜の夕飯をどうしようかと考える。ここのゲストハウスで夕飯を予約するのを忘れてて、本当に食べるもの何もないと言われたので、駅近くのお店を紹介してもらい、そこまでまたチャリをとばす。2kmほどあるけど周りは綺麗な渓流で、都会に疲れた僕を癒してくれる。三峰口駅に着いて、紹介してもらった古めかしいモツ焼き屋にはいると、強面の店主のおっちゃんが今は珍しいブラウン管のテレビを見てた。

扉をあけて「まだやってますか...?」と恐る恐るいうと、おっちゃん、

「何しに来た?」

えええ。いやいや、ここ食いもん屋やねんから飯食いに来たに決まってるやろ。

「あの、ご飯を食べに...」

と恐る恐るいうと重い腰をあげてぶっきらぼうに厨房へ向かう。如何にも昭和の親父といった感じである。見た目もヤクザみたいで怖いし。えらい店入ってもうた...でもこれも旅の情緒だと思ってモツ焼き定食が来るまでしばらく待つ。おっちゃんは手際よくご飯とみそ汁を準備して、ようやくモツがぶつ切りでドカッと出てきた。ここはもモツを自分で焼いて食うスタイルなので、腹を壊さないように入念に焼いて食べる。あれ、うまいやん。おっちゃんうまいで。とガツガツ食ってると、中学生っぽい4人組が入ってきた。部活帰りか何かで、カバンを机の上に置いてだべってると、おっちゃん、

「机の上に置くなオラ!」

中学生タジタジである。なかなかこんな接客現代では見られない。中学生も気の毒である。でも面白いのでしばらく見てたけど、おっちゃんはぶっきらぼうだけどちゃんと愛のある感じで、こういう古いタイプの人間はなかなか魅力があって良い。人の心を見つめ続ける時代おくれの男になりたい♪満足して出ようとすると、お金を払うのを忘れてて、おっちゃん、

「おい!金は!」

危ない危ない。僕タジタジ。

 

で、宿に戻って他の宿泊客が来るのを待つ。今夜は合計8人が泊まるらしい。明日は1日だから、みんな三峯神社のお守り目当てで来るのかな。宿主夫婦と小さいお子さんが夕飯を食う間、世間話をして待つ。こういう暮らしもあるんだなぁ、都会の喧騒から離れた慎ましい生活...いろんな人の生き方を見られるのが旅の1番の醍醐味である。しばらく待ってると次々と今夜の旅人がやってきた。まず最初はかっこいいバイクで東京から来た童顔の男。ちょっと小太りでかわいい。次に登山しに来た埼玉県の真面目そうな男。こちらは細身でシュッとしてる。この三人でしばらくしゃべってたのだけど、最初はみんなお互いのことを探り合う感じで、だんだんと打ち解けてくるこの感じがゲストハウスっぽくてよい。童顔クンはその顔に似合わず体育会系の料理人見習いで、25歳らしい。真面目クンは公務員らしく、なんと三峯神社のレアお守りを紛失して、もう一回もらいに来たらしい。彼も25歳らしい。若いっていいなあ()。しばらくして今度は女の子二人組がやってきた。やったあああああ女の子だあああ!!!と心がピョンピョンしてると、同時にちょっと独特の雰囲気を持った変わってそうな男子大学生もやってきた。彼は今日特に理由もなく秩父を歩き回ってたらしい。ちょっとよくわからない。他にも二人来るはずだけど遅い時間に到着するらしい。で、オーナーさんが焼酎を持ってきてくれたので、集まったみんなで酒を酌み交わしながら談笑する。女の子たちは二人で旅行してて、秩父を観光して三峯神社まで登山する予定らしい。1人はピッチピチの18歳。う~ん。ピッチピチ!もう1人は「年が違うんですー」って言うので浪人したのかな、と思ってると、なんと大学一年生29歳!らしい。詳しくは話を聞けなかったけど、何か尋常ならぬ想いをもって大学に入りなおしたのだろう。うん。わかるで。痛いほどわかるで。辛いこともあったやろな、でもがんばろな。応援してるで。みんなで酒飲みながら(18歳の女の子はちゃんと飲まなくて偉い)お互いの職業のこととか、趣味とか、人生とか語り合ったあと、今日の日差しと疲れのせいですぐ酔っぱらってしまったので、一人で渓流のほうへ行ってボーっとする。明かりはほとんどなくて真っ暗で少し怖かったけど、水の音がいくつも重なり合って和音みたい。星は曇ってて見えないけど、僕にもようやく夏の夜とやらが訪れたようである。(夏の夜を飾るハーモニー♪)やっぱ僕は夏がどうしようもなくすきみたいだ。すきっていいなよ…夏。

明日は朝4時くらいに起きて、標高1100mの山のぼるので宿に戻って早めに寝ることにした。10時くらいだったけど、明日はみんな三峯神社に行くみたいなので、みんなも早めに寝るらしいし。ここの寝室は外と障子一枚隔ててるだけでほぼ外みたいなもんで、虫とかがいっぱい入ってきて大変なことになるらしいので、蚊帳が用意されてた。蚊帳の中で寝るなんて初めて!素敵!渓流の音を聞きながら、(たまに幹線道路の車の音もするけど…)静かに眠りについた。ぐーすぴ。

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本日の走行距離

だいたい60km