ばおわー旅行記

自転車旅の備忘録

色を取り戻したくて…夏 in 奥秩父【三日目】

朝4時起床。あたりはまだ真っ暗。誰も起きてないので、みんなを起こさないように電気をつけずにソロソロと支度をして宿をでる。朝飯も用意してなかったので空腹のまま山を登ることになる。体力持つかなあ…

今日はこの旅の目的である三峯神社に参拝する。三峯神社は標高1102mのところに鎮座する由緒ある神社である。毎月1日は限定の白い「氣守」お守りが販売され、それを目当てに来る人が多く、テレビで話題になったか何とかで1日はとても混むらしい。整理券が夜中二時とかに配られはじめるらしいけど、それでも三峯神社までの道はめちゃくちゃ渋滞になるらしく、できるだけ早い時間に出発することにしていた。

宿から三峯神社までは約25kmとさほど大したことないけど、なんせ1100mも登ることになるので気合を入れる。箱根峠より高いやんけ。僕が今まで登った峠で一番高いのは奥多摩にある風張峠で、それは標高1146mだった。というかこの奥多摩の時は峠があるなんて知らず、適当にぶらぶらしててなんかやけに坂上るなあと思って途中で調べたら実は峠だった、というものだった。峠を登ったり険しい道を行くときは事前に心の準備というのが必要なので、この時は本当に絶望したのを覚えている。ちなみにこの風張峠の下り坂で調子に乗ってスピード出しすぎて、コーナーを曲がりきれず時速40kmでこけた時はマジで死ぬと思った。あの時ほど、『死』を意識した瞬間は僕の人生の中でもなかなかない。ノーヘルだったし…こけてそのままズサ――ッと何mか引きずって、えらい擦り傷をしただけで済んだのは本当に奇跡という感じである。(自転車は曲がってはいけないところが曲がったりしてだいぶ傷ついてしまった…ごめんねふえぇ君。)一歩間違えば坂道で大事な何かがあ!ポロン♪てしてもおかしくなかった。そういう経験もあって、やはり下り坂はちゃんとブレーキかけましょう皆さん。以前「男には止まれない、いや止まってはいけない瞬間がある」と故郷への旅で書いたけど、前言撤回します。正しくは「男には止まらなければいけない瞬間がある。」です。はい。ちょっと大人になりました。よくできましたね~ヾ(・ω・*)ナデナデ

さて山頂に向けてひたすらこぎ続ける。こんなに朝早いのにやはり車がちらほら走っている。みんなお守り目当てだろう。家族連れや地元のヤンキーっぽい人やおひとり様と多種多様な顔ぶれである。でも車で楽に行くより、自分の足で苦労して行ったほうがなんかいいことありそうだと思うので、抜かされても気にしない。だいたい僕には山岳信仰とか、修験道とか、そういうドM心をくすぐるようなのが性に合っているみたいだから、これでいいのだ。僕は今日までそうやって生きてきたのだ。そして今私は思っています。明日からもこうして生きていくだろうと♪

僕は峠を登るときはスピードを全然気にせず、プラプラとマイペースで登ることにしている。そうすればそんなに疲れないし、歌も歌いながら登れるし、気づいたら山頂についてた!くらいの気分になれるからである。この時もプラプラ、車線なんか無視してグネグネ走ってたのだけど、あとのこり5kmくらいのところでなんと車の渋滞が…すげえ。まだ6時過ぎくらいなのにこんな渋滞してんのか…みんなどんだけお守り欲しいねん。ここからはあまりグネグネ走れないので、車の間をぬってちゃんと走ることにする。車に乗ってる人は退屈そうにスマホ見たりゲームしたりしてる中、僕はいかにもきつそうな感じではあはあ言いながらこぐ。そうすると車の人は「えええ、こんなとこまで自転車できてるなんてすげえ…」みたいな目で見てくれるので、とても気分が良い。視線がきもてぃとはこういうことか!ああ!今!俺!すげえ!俺!今!みたいな感じである。自分が努力してる姿を人に見せるのはあまり感心したことではないけど、今日ぐらいええんとちゃう?と言い聞かせる。まあ実際結構きつかったし。

そんなこんなで朝7時頃に山頂に到着。登り切ったああ!うおおおお!意外と早く着けたな。疲れもあんまりないし僕も強くなったもんだ。

 

 

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鳥居が三つ並んでる珍しい光景。

 

さすが山の上にあって空気がひんやりしてる。いかにも下界と隔たった神聖な空間である。僕には残念ながら霊感とかそういったものが一切ないので、パワーを感じるとかはないけど、やはりこういう場所に来ると人智を超えた何かがあると考えたほうがいいのではないかという気がしてくる。それを神という人もいれば、自然という人もいれば、ぷいにゅ~♪という人もいる。歴史を見ても、人間はおそらくそういった存在を仮定せずにはいられないのだろう。とはいうものの周りは観光地並みに人が多くて、あんまりのんびりもできないのでさっそく広い境内をまわる。本殿にお参りして、今度はちゃんとお賽銭も入れて、日々の感謝を伝える。本殿の横には、石畳に突如出現したという有名な龍神様がいて、僕も写真を撮ってみた。

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赤いところが目っぽい。まあ言われれば龍に見えなくもない。

 

時間もあるしせっかくなので摂社と末社にもひとつずつお参りする。本殿前にはあんなに人が多かったのにこの辺に来ると少なくなる。三峯神社には奥宮があり、妙法ケ岳の山頂まで登山すればそこに着ける。ほんとうはそこまで行こうと思ってたのだけど、今から行くと往復2時間くらいかかりそうだし、お腹がへって体力的にも危ないし、天気も悪かったので今回はなし。だけど三峯神社はけっこう気に入ったので、またいつか来ようと思う。その時にでも登ろう。境内は広く、今度は反対側へ行ってみると、何やら人だかりが。『えんむすびの木』 。へえ。二本の木がより沿って生えている。へえ。その下で、紙に自分の名前と好きな人の名前を書いて、二つ合わせてこよりにして納めると恋が叶うらしい。へえ!!!誰の名前書こうかなあ。ドキドキ♡もしかしたらこの記事を見てる君かもしれないゾっ☆キャッ♡……とか言ってるから彼女できないんだろうなあ。

そして、今回の一番の目的である『氣守』をもらいに行く。鳥居のところでもらった整理券を渡して、ついに手に入れた!

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しっかりとした木箱の中には純白の氣守が鎮座しておられた。なんて神々しいのだ…白とは清浄な魂の象徴である。まっさらな気持ちで、もう一度初心に戻ってがんばろう、という気持ちになる。都会の喧騒に疲れて褪せてしまった色を取り戻したくて、ふと三峯神社まで行こう!と行き当たりばったりの旅だったが、ようやく僕は気づいたのだ。一度失ってしまっては戻らないものもある。いつまでもセピア色の思い出を引きずっていては先に進めないのだ。真っ白なこのお守りは、そんなことを僕に教えてくれているようだった。色が無いなら、新しくまた12色の心で好きな背景を描き足して♪いけばいいのだ。そのすべて真実♪なのだ。

 

さて、もう三時間くらいぶらぶらしたのでそろそろ山を下りて帰ろうとしたら、昨日ゲストハウスで知り合った公務員と変な大学生に遭遇した。二人は昨日の女子大生二人組と一緒にここまで歩いて登山してきたらしい。女の子たちとは途中で解散したらしい。(どんまい)彼らももう参拝を終えて帰るところで、バスを使って帰りたいらしいがなんせ渋滞がすごく次のバスが来る時間がわからないので、歩いて帰るか迷っていた。僕は一足先に山を下りることにした。彼らに別れを告げて、おそらくもう二度と彼らと会うことはないんだろうなあと思うと、なんか不思議な気分がした。一期一会とはよく言ったもので、こういう出会いと別れを繰り返して僕らは大人になってくんだろうなあ。

さてこれからご褒美の下り坂。雨でぬれてたし滑ると危ないし、ちゃんとブレーキをかけながら30~40km/hくらいを維持して降りる。60kmくらいで降りるときのンギモヂイイイイ!までの快感はなくとも、『あ…きもちい…♡』くらいの感覚である。秩父駅付近までの30kmはほぼ下り坂だから、あとはもう時の流れに身を任せ♪という感じである。朝からなんも食べてないのに1100m登ったのは本当によくやったと自分でも思う。たぶんいきなり何人かで無人島にほっぽり出されたら僕が最後に生き残る自信はある。(蠅の王かよ)さすがに腹が減ったので、ゲストハウスで童顔クンに教えてもらった豚丼の店で腹ごしらえをすることにした。けっこう有名な店らしく、外で待つこと約15分。

豚どーーーーーーーん!!!!

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丼からはみ出るくらいの豚がのってるのがココの売りで、脂がのってておいしかったー!特大もあったけどチキって普通盛にしてしまって、少々もの足りなかった。僕は肉の中で一番豚肉が好きかもしれない。飛ばない豚はただの豚だというけれど、ただの豚でもこうして自らの命を犠牲にして我々の舌を喜ばせているのである。我々はそんな健気ないのちを頂いているのだ。カッコいいとは、こういうことさ。(by 糸井重里

ご飯も食べたし、あと何しようと思って適当にお寺とかプラプラして、でももう疲れたし見るとこないし温泉にでも浸かってゆっくりすることにした。何かよさげな温泉がないか調べたけど、よさげなとこはちょっと秩父から離れててコスパが悪いので、駅前のいかにも商業施設的な入浴施設で我慢することにした。ここはほんとに西武秩父の駅の目の前にあって、しかも最近できたばかりで新しく秩父の観光スポットを目指してる感じのとこだった。が調べてみると、オープン後すぐに基準を超えるレジオネラ菌が検出されて営業停止になったらしい。今はちゃんと問題を解決して営業してるけど、ほんとに大丈夫かよ…まあこういう不祥事があったところは逆に衛生管理に力を入れると思うので、その可能性を信じてみたい。

中はとてもきれいで、くつろぐスペースもあるしでなかなか雰囲気はよかった。温泉はいたって普通で、特筆するようなこともなかったけど、旅の最後に浸かる温泉というのはいつでも心に沁みる。知らない土地の露天風呂で空を見上げて旅を振り返る瞬間は何物にも代えがたい至福の時間である。赤とんぼが大量に飛び回ってて僕もあんなふうに飛びたいなあと思う。ああ、しあわせのトンボよどこへ♪と思っていると雨がぽつぽつと降ってきた。マジかよ。今降られたらせっかく温泉で汗を流した後にまた濡れるやん…中へ入ってしばらくすると雨足が強くなってきた。大粒の雨だ。こ…これは…

ショーシャンクの空に』ごっこができるぞ!!!

ショーシャンクの空にごっことは、映画のワンシーンのごとく両手を広げて大雨に打たれるという遊びである。どうしようもなく雨に打たれたい衝動が抑えられなかったので、すっぽんぽんのまま雨の中へ飛び込んだ。人の目もあってさすがに両手を広げることはできなかったが、なんて気持ちいいんだ!ああ!俺!生きてる!今!俺!て感じである。これこそが生き物本来のあるべき姿なのだという気がしてくる。『ヒト』が社会性をもつ『人間』として生きていかねばならぬときにまとわりつく絆(ほだし)から解放されるのだ!皆さんもぜひ一度全裸で大雨に打たれてみてください。きっと、なにか得られると思います。たぶん、失うものもあるけど。

風呂から上がったらしばらく併設のくつろぎスペースでまったりする。というか雨がかなり強くて帰りたくても帰れないので、雨足が弱まるまでしばらく待つことに。しかしやんだと思ったらまた降りだすの繰り返しで、らちが明かないのでしょうがなく小雨になったタイミングを見計らってそそくさと出ることにした。駅からは近いので、なんとか濡れることなく西武秩父駅に到着。ここからは輪行で、電車に乗って池袋まで帰る。ランドナーは泥除けとか装備品とか外すのが面倒で、なかなか輪行するのも時間がかかるけど、こうして自転車をたたんでるときがまた何とも言えず好きなんだなあ。雨に濡れた自転車を拭いていると、なんと昨日ゲストハウスで一緒になった女子大生二人組と再会した。何たる偶然!ナンタルチアサンタルチア!一期一会とは言うけど、こんなこともあるんやなあ。新宿とか渋谷とか、人がアホほど多いのが僕はほんとに耐えられないのだけど、もしかしたら道行く人ごみの中にも、今まで出会った人がいたりするのかなあ、僕が顔を覚えていないだけで。

で、西武秩父から池袋まで電車に揺られること二時間。帰ってきたよ東京。大雨だし人が多いし自転車を組み立てる場所がないので、とりあえず駅前のロッテリアに入って雨が止むまで時間つぶし。なんもすることがないので趣味の人間観察をする。やっぱり池袋は心がどこ向いてるかわからない人が多くて苦手だなあ。雨が小降りになってきたので、店を出て急いで自転車を組み立てる。サドルバッグを支えるバッグサポーターが完全に折れてしまって、バッグがちょっと後輪ブレーキのワイヤーに干渉してしまうけど、家まであとちょっとだからそのまま走る。池袋からの道は慣れてるから迷うことなく家に到着。おかえり。Sweet Home。

 

今回の旅もなかなかにいろいろなことがあった。いいもんですよ、旅は。僕は定期的にどっか遠いところに行かないとダメな体になってしまったようなので、またしばらくしたら旅に出たくなるだろうなあ。旅行記書くのはめんどくさい()けど、その時その時に感じたことをあとになって思い出せるというのはけっこういいもんである。頭の中の点々とした記憶が、ぼんやりと線になっていくのがうれしい。というわけでまた気が向いたらなんか書きます。次はどこに行こうかなあ。またその時にお会いしましょう。では。

 

本日の走行距離

だいたい75km

 

P.S

砂に書いた名前は見つかりませんでした。でも家に帰ったら3匹のぷいちゃがいたのでこれからも無事プイプイできそうです。

 

おわり