ばおわー旅行記

自転車旅の備忘録

奥の細道 二日目(宇都宮~郡山)

二日目

朝8時くらいに起きてしばらくぼーっとテレビ見て、9時過ぎくらいに出発。寒い。氷点下とか聞いてないよお。でも太陽が出てるからまだ許せる。太陽さん、おはよう!

 

125号線を走る。交通量もそんなになくてとても走りやすい。左手には雪化粧をした山々が連なっている。いいねえ、これだよこれ。大きな山が二つ仲睦まじげに並んでいる。後で調べてみると男体山と女峰山というらしい。ほうほう。でもそんなことは走ってるときは知らないから『わぁい、日本アルプスだぁ』と適当に言ってみる。僕にとって大きくて雪が積もってる山々はぜんぶ日本アルプスなのである。誰がなんと言おうと日本アルプスなのである。

 

朝だからスピードも出さずプラプラ一時間くらい走り、さくら市に到着。この辺でブランチ腹ごしらえしようと思ってマクドでソーセージエッグマフィンとグラコロバーガーとコーヒーを注文。前も言ったと思うけど、なんで旅先でマクドやねん、もっとご当地のもんたべたらええやん、て思うかもしれない。ちゃうねん。ぜんっぜんわかってへん。ウチの気持ちぜんぜんわかってへん。いっぺん自転車で知らんとこいってマクド食べてみい?ちゃうから。普通のマクドとちゃうから。悔しいけどあかん、あんたよう忘れられん。やっぱ好きやねん。あんたのコト。

                                                                                

で店を出ようとすると知らないハゲのおっさんが話しかけてきた。僕の恰好を見て自転車乗りだと分かったらしく、そのハゲのおっさんも自転車に乗ってるからといろいろ話してくれた。彼はマウンテンバイク乗りでダウンヒルをよくやってるらしく、ディスクブレーキのすばらしさについて力説してくれた。ツーリストにディスクブレーキは無縁だと思いながらもうんうんうなずいて『いやあいいっすね~』なんて言う。自転車乗りにも色々いて、ロードレースをやる人もいれば、旅をする人もいれば、山でアクロバティックなことする人もいるけど、みんなそれぞれ愛を持って語ってくれるから楽しい。だいたい自転車乗ってる人に悪人はいないのである。ハゲとか言ってごめんなさい。

 

で、ここからは4号線で大田原市まで行く。4号線は車線も広く、歩道も広いから走りやすい。でも小石がとにかくうざい。意味わからないくらい小石が散らばっている。小石のオンパレード。なんなん。この小石はどっから来んの?何のためにそこに存在しているの?そしてどこへ向かうの?まあトラックが運んでくるのだろうけど。トラックに運ばれる小石もかわいそうだけどさ。こんな誰もいないところで一人ぼっちにされて。でもパンクにビクビクおびえなきゃいけないこっちの気持ちも考えてほちぃ。自転車乗りにとって小石はタマムシシティのゲームセンターのロケット団(赤緑青)、あるいはチョウジタウンの地下アジトのロケット団(金銀)のようなものである。ロケット団の1人ひとりはザコだけど、繰り返し戦い続けていくとHPがなくなっていって、ちょっとこっちが命中率90%くらいの技を外した隙にラッタの『ひっさつまえば』やドガースの『だいばくはつ』で死んでしまう。そんな感じでパンクする。え、よくわからんって?大丈夫、僕もよくわかりません。

 

パンクはできるだけしてほしくないけど、いざとなったら僕にはパンク修理セットがあるから大丈夫なのだ。テテテテッテレ~♪パンクしゅ~りせっと~!……あれ……

 

 

 

 

(空気入れがない…)

 

 

 

 

 

ある朝急に君は去ってしまった。部屋の電気はつけたままだった。急須の茶殻も昨日のままだった。そこには君だけがいなかった。いや僕でさえもそこには存在しなかった。君がいて初めて僕という存在が位置づけられていたのだ。立ちすくんでいるのは僕ではなく、僕の亡霊であり、畳に映る僕の影であり、出がらしの茶葉だった。

 

 

 

しばし茫然。まじかよ。失って初めて空気入れの大切さに気付いた。水のように、空気のように、当たり前のように空気入れはそこにあったのに…。でももう遅い。愛は戻らない。まったく男は学ばない生き物である。何も言えなくて…冬。

 

落としたのかもしれないし、誰かが盗んだのかもしれない。でも今まで何千キロと走ってきたのに全くビクともしないくらいの締め付けだったしそう簡単に落とすとは思えない。第一それなりにでかいので落としたら気づきそうなものである。そうなると誰かが盗んだ可能性になるけど、フロントバッグやリアバッグの中身は取られてないし、折り畳みの空気入れだけ盗む奴なんている?しかもアタッチメント外してるから普通の英式のチューブにはそのままだと空気はいんないよ?むーん。謎。こういう時、感情に任せてどちらかの可能性に決めてしまうのは、いやしくも研究という名の監獄にはげむ者の取る科学的態度とは言えないので、深くは考えないことにする。語りえぬものについては沈黙しなければならないのである。

 

さて、大田原市まで4号線を走り、今度は72号線を走ることにする。この道は山の中を走る道だけど、アップダウンも激しくないし車もほとんど通らないからとても快適だった。こういう道を走ってる時が一番楽しい。天気もいいし、寒いけど太陽もぽかぽかだし、心のわだかまりもどんどん溶けてくね。うん。プラプラ走っていると、道端に階段があり、その先にこじんまりとした神社があった。そういえば初詣してなかったので、自転車を止めてその鍋掛神社とやらへお参り。

 

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山奥の道端にポツンとあるようなところなので、人っ子一人いない。手水舎の水も枯れている。賽銭箱すらない。こういう神社がやっぱり好き。有名で大きな神社はたいてい人が多いし、人が多いと気が滅入るので、朝早くに行くことがおおいけど、ここはたぶんいつ行っても人なんか来ないだろう。人がいないとそれだけでうれしい。いや別に人が嫌いってわけじゃないですよ。個々人はみんな魅力的で素敵だなあと思うんですけど、人がいっぱい集まってエントロピーが増大したときが嫌いなだけです。ドリンクバー単体はいいじゃないですか。でもドリンクバーで『ぜんぶ混ぜようぜ~ウェーーーイwww』みたいなのが嫌いなわけです。ぜんぶ混ぜておいしいわけないだろ。第一ウェイウェイうっせえよ。というかウェイが嫌いなだけですね。はい。

 

 

途中で294号線に合流して、白河へ。松尾芭蕉さんも『白河の関を越えんと』して旅に出たわけだから、ようやく僕もここまで来たわけだけど、しかし尋常じゃないくらい寒い。太陽さんも雲隠れしてしまい、風も強くなってきた。せっかく溶けかけてきた心のわだかまりが、また変な形になって固まってしまう。バレンタインチョコの手作り感っぽくていいじゃない、あ、そういえばバレンタインだね、余ったからあんたにチョコくれてやるわ…べ、別にあんたのためにつくってきたわけじゃないんだからね!!(ぷんぷん)お…おいしい…??ふ、ふーん、じゃあホワイトデーにとびっきりのお返し、ま…待ってるから…。みたいな女の子降ってこないかな~!てくらい精神的にきつかった。寒さで心が折れる前に、とりあえず休憩しよう。白河はラーメンが有名らしく、店を回ってみたけど年始だししまってる店が多いし、やっとのことで空いてるボロい定食屋を見つけたので、飯がてら休憩。

 

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いかにもな昔の定食屋。(後で調べたら創業50年らしい。)

 

ラーメンと餃子を注文。昨日も餃子食ったけど腹が減ったのでしょうがない。

 

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なんでもない醤油ラーメンと餃子だけど、ほんっっっっっっとうにおいしかった。こんな寒さの中耐え続けている僕をやさしく包んでくれる愛がそこにあった。たぶん、どんな高級料理が束になってかかってきても、この時のラーメン餃子のおいしさにはかなわないだろう。おっちゃん、おばちゃん、うまいで。ほんまにうまいで。泣きそうやで。高級料理の味のききわけができる人間よりも、作ってくれた人に感謝してごはん粒とか残さずちゃんと食べる人間、サウイフモノニワタシハナリタイ。

 

 

今日は郡山まで行きたかったので、とにかく急いで4号線を走りまくる。日が暮れてきて夜道が怖いけど、もう寒さで頭おかしくなりそうだったのでもうどうにでもなれ~ってくらい爆走する。この時の記憶はあまりありません。とにかく車におびえながら寒さに震えながら必死に漕ぐだけだった。そしてなんとか事故も起こさず6時ころ郡山に到着。今日こそ快活クラブに泊まろうと思ってたけど、やはり凍えた手足を何とかしたいので近くの温泉施設でまったりお湯につかることにした。地方都市あるある言いたいよ♪地方の温泉施設はDQNが多い♪はい。それだけです。

 

さぁてあったまったし快活クラブへいくぞ~!と外へ出ると雪。まじかよ。今年最初の雪の華♪ですやん。いやほんとやめてほちい。天気予報晴れやったやん。なんで嘘つくの?もう知らない!ぷいっ!とは言ってられないので自転車にもどるとそこには雪の積もった山々が。

 

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『わあい、日本アルプスだぁ(泣)』

 

 

今日は快活クラブの12時間パックです。郡山駅前の快活クラブが入ってるビルは居酒屋が何軒か入っており、新年会やらで酔っ払った若い男女の群れが騒いでいる。おいさっきウェイは嫌いだといっただろ、道を開けろ!だいたい人に迷惑かけるなら酒飲むな!とは言わないけど、嫌な予感がする。酔っ払いが快活クラブに流れてくるぞこりゃ…

 

案の定その日は酔っ払いといびき野郎のせいで全然快活じゃありませんでした。もう文句を言う元気もありません。心優しい人間は何も言わず黙って精神をすり減らしてゆくのです。こうして酒から生まれたウェイ太郎は快活クラブの王様となったのでした。めでたしめでたし。

 

 

本日の走行距離

だいたい125㎞