ばおわー旅行記

自転車旅の備忘録

奥の細道 三日目(郡山~本宮)

3日目

 

7時起床。疲れてたのにぐっすりと眠れず、体が痛い。でも今日で仙台に到着予定だから、頑張っていくぞ〜!

 

と張り切って外に出てみると、なんということでしょう。一面の銀世界。昨日雪が降ってきた頃から、こうなる事は何となく予想していた。でも人間物事を悪い方向に考える癖がついてしまうと卑屈になってしまうし、『まぁ大丈夫やろ』と臭い物にはフタ理論で見て見ぬ振りをしていた。雪が多少降っていても、なんとか夜のうちに雪が止んで朝日で溶けてないかな〜という一抹の希望を持っていた。

 

 

 

それがこのザマである。

 

 

 

雪こそ降ってないものの道路は凍結、自転車で走れるような状態ではない。三匹の子豚の1匹目が死亡。残り2匹です。

 

何が郡山やねん、凍山やんけ、としょうもないこと言うくらいしかできない。まだ消え残る君への想い♪じゃなくて雪やんけー!と1人で歌うくらいしかできない。でもしょうがないのでとりあえず自転車を押して歩いて進むことにする。ゆっくりでもいい、とにかく前に進まなきゃ始まらない。まぁ昼頃になったら太陽が雪を溶かしてくれるに違いない、と持ち前の楽観主義で355号線を進み続ける。

 

でもずっと歩き続けるわけにはいかないから、道は凍ってるけど試しに自転車乗ってみようと思って恐る恐る漕いでみる。

 

 

 

 

 

 

...あれ?

 

 

 

 

 

 

 

...意外と大丈夫じゃね?

 

 

 

 

 

 

 

乗れる!乗れるぞ!ちょっと怖いけどカーブに気をつけて出来るだけ車体をまっすぐにすれば走れるぞ!ウオオオオ!僕はエヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジです!!!うおおお!!!

 

 

その瞬間、世界は色づき始めた。草木は生い茂り、バラは一面に咲き誇り、小鳥は賛美歌を歌い、太陽は優しく微笑んでいた。僕はここにいたい。僕はここにいてもいいんだ!

 

『おめでとう。』

『おめでとう!』

『めでたいな!』

『おめっとさん!』

『おめでとう。』

 

 

『ありがとう!』

 

 

スピードは出せないけど、これなら今日1日で50kmくらいは走れそうだ。仙台まで120kmあるけど、予定を変更して今日は福島市あたりまで行こう、と決めた。うん、別に焦る必要はない。俺は何をそんなに生き急いでいるのだ。ゆっくり、焦らず、周りの景色を楽しみながら、しかし着実に、目指すべきものに向かって、進めばいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、現実はそんなに甘くない。

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5kmほど走った時点で雲行きがあやしくなり、ついに雪が降り始めてしまった。風も出て来て、横殴りの雪が容赦なく僕の体を蝕んでいく。気温は-2℃。寒い。クッソ寒い。というか痛い。せっかく心に咲き乱れたバラがみるみる枯れてゆく。ちょっとタンマ。これはヤバイ。どう考えてもヤバイ。この時点で2匹目の子豚さん死亡。ちょっと耐えられそうにないので、本宮市駅前のファミマのイートインに退避し、しばらく天候が良くなるのを待つことにした。

 

しかし一向に天気は良くなる気配がない。むしろ吹雪が強くなっていく。いや、もうちょっと待ってみよう。今は吹雪でも、もう少ししたらやむかもしれない。太陽が顔を見せさえすればこっちのもんや。まだ俺は負けたわけじゃない、ここで負けるわけにはいかない。

 

ところが天気予報を調べると今日はずっと雪。明日の昼まで晴れそうにないし、太陽が雪を溶かしてくれそうもない。極めつきに大雪注意報まで出てる。

 

 

ここで3匹目の子豚死亡。ゲームオーバー。完全に心折れた。ポキッ。心が折れる時ってこんな音するんですね。ポキッ。三度の飯よりポキッ。酒の肴にポキッ。男は黙ってポキッ。

 

 

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この時の僕がどれだけ絶望し惨めだったかを語る言葉が見つからないので、せめてもの記念に阿武隈川をバックにパシャリ。うーん。カッコいい。

 

雪が降り積もる中、本宮駅の前で輪行作業をする。屋根は一応あるけど、風が吹いてるから屋根なんてあってないようなものだし、雪がどんどん積もっていく。おまけに泥除けの六角穴付きボルトに雪が入りこんで凍ってしまって、六角レンチが入らない!こんなことって普通ある?どうしようもないから小指の先で氷をあっためて溶かして何とかレンチを入れる。-2℃で雪降り積もる中、1人で泣きそうになりながら六角穴付きボルトの氷を小指であっためて溶かす男の惨めな気持ちがわかりますか?世界で一番タフな15歳の少年であるカフカくんもたぶん心折れると思います。

 

 

本宮駅から郡山駅に戻り、郡山駅からは新幹線で上野まで戻る。邪魔にならないように自転車をデッキの端に置いてずっと立ってることにした。ところが弱り目に祟り目というか泣きっ面に蜂というか、よくないことは重なるもので、ちょうど東北新幹線Uターンラッシュにあってしまい自由席混みすぎイィ!!ほんと冗談じゃなく朝の京王線くらい混んでた。もうどうにでもなれ。ははは。煮るなり焼くなり自由にしろ。途中の駅で開くドアが僕と反対側のドアばかりだったことだけで心の中で『っしゃあ!』てガッツポーズするくらい、幸せを感じる閾値が極限まで下がっていた。あの時ならちょっと女の子に『おはよう!』て言われただけで一瞬で好きになってたに違いない。結構ちょろいですね。ははは。

 

上野に着いたらすぐ自転車を組み立てて家に帰宅。疲れた。本当に疲れた。もうこんな旅はしない。絶対にだ。こんな辛い思いはもうごめんだ。おうちでぬくぬくしてればええんや。ぬくぬく...

 

 

とか言いつつまたするんだろうなぁ、と今旅行記を書いてて思います。何がそんなに僕を旅に駆り立てるんでしょう?わかりません。世の中分からないことだらけですね。そういえばニトリで自転車の絵が描いてある暖簾を買ったんですけど、こんなことが書いてあります。

 

LIFE IS LIKE

RIDING BICYCLE

 

TO KEEP YOUR BALANCE

YOU MUST KEEP MOVING

 

これを毎日見てるからかもしれませんね。うん。そういうことにしておこう。

 

 

おわり

 

 

本日の走行距離

だいたい10km(最短記録)