ばおわー旅行記

自転車旅の備忘録

奥の細道 一日目(東京~宇都宮)

あけましておめでとうございます。去年から本格的に自転車の旅を始めて、すっかりその魅力に取りつかれてしまいました。というわけで早速ですが新年一発目にどっか行こうと思って突発的に旅が始まりました。

 

今回の目的地は仙台です。真冬なのにどうしてこんな寒い所へ行こうと思ったのか、自分でもよくわかりません。とにかく行ったことがなくて、3日くらいで行けるところで最初に思いついたのが仙台だというだけで決めました。最初に言いますが、結局仙台には行けませんでした。今思うと本当にバカでした。真正バカでした。真冬に雪が降るところへは絶対に行かないと決心しました。でもまぁせっかくなので自分の記録用に旅行記を書いてみます。今回は冬の北関東、東北ということで景色もあんまよくないし、全体的に観光地として目立ったものはないので、ひどく内省的です。写真もほとんど撮らなかったし。旅行記というより徒然草です。心に移り行くよしなし事をつらつらと書きます。だって本当に何もなかったんだもん。もん。

 

一日目はとりあえず宇都宮まで行こうと思っていたので、江戸川サイクリングロードと鬼怒川沿いを走ると大まかに決めて出発。朝十時に家を出て6号線を通り江戸川サイクリングロードへ。仙台まで行くには4号線をひたすら行けば到着する。ただネットの情報を見る限り交通量が多く危険そうなので、ゆっくりでいいから安全第一ということでサイクリングロードや川に沿った道を行くプランにしていた。元日から東北まで自転車旅する物好きはそういないと思ってたけど、江戸川サイクリングロードではジョギングやロードバイクで走っている人がけっこういて、なんとなく嬉しくなる。家族で凧揚げしてたり、ゴルフしてたり、各々がそれぞれの新年を迎えていた。天気は快晴。蒼井そら青い空、白い雲♪見渡せば関東平野、どこまでも澄み渡っていきますこの想い、遮るものは何もない。

 

 

 

そう、風さえも。

 

 

 

江戸川サイクリングロードは土手の上にあり、風が建物に遮られないからもろに直撃する。風、モロツヨシである。運悪く斜め方向に吹く向かい風(しかも強い)。どうやら僕は女の子にはモテないくせに向かい風にはモテるようである。(向かい)風をあつめて♪今までの自転車旅の8割くらいは向かい風な気がする。でもしょうがないからぶつぶつ文句を言いながら漕ぎ続ける。全然スピードが出なくて萎えぽよ。まぢムリ。僕がウルトラセブンのモロボシダンなら『それは血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ』というに違いない。というか実際に言ったし。ギエロン星獣もびっくりである。ギエー。

 

元気を出すためにウルトラマンシリーズの歌を歌いながら走る。この歳になってようやくウルトラマンの歌の良さがわかってきた。とくにウルトラマン80のオープニングの歌詞は本当に素晴らしいので一度聴いてみてください。昔は昭和マンの中で一番ブスだとか思っててごめんなさい。

 

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僕のウルトラマンに対する愛がどれほど深いかを語ります。旅行記全然関係ないので興味ない人は飛ばしてください。僕は小さいころからウルトラマンが大好きで、実家には80までのウルトラマンが録画されたビデオテープ(VHS!)がそろっていて、本当にテープが擦り切れるくらい見ていた。まだ話の内容はあまり理解できなかったから、戦闘シーンだけを繰り返しみていて、特に肉体派のレオの真似をして布団の上でバク転の練習とかしててよく怒られたものだ。将来の夢はウルトラマンだったし、本当になれると思っていた。困っている人がいたらすぐ飛んでいって助けに行くような、そんなウルトラマンみたいになりたかった。だからハヤタ隊員のようにカレー食ってるときにスプーンで変身したり、体を縛られたダンのように、盗まれたウルトラアイ(メガネ)に手を伸ばし、架空の敵と戦っていた。

 

僕が将来結婚して(もし結婚できたら)男の子が生まれたら、絶対にウルトラマンシリーズを見せようと思う。というか無理に見せなくても、ウルトラマンがいつでも見られるような環境を作って自然と興味を持って見るようにさせる。だいたい男の子なんて適当に放ったらかしておいて育てるのが一番な気がする。親は子供自ら興味を持たせるような環境を作るだけでいい。昆虫や動物の図鑑を置いて、マンガ日本の歴史を置いて、世界文学全集とかを置いてれば勝手に見るもんだ。僕も昆虫が好きで、家に並べてあった図鑑に載ってる昆虫の絵をよく書いていた。カマキリの育て方なんかを見て自分で育ててみたいと思い、カマキリを捕まえてきて虫かごで育てていた。バッタなんかを入れるとすぐ捕まえて食べる時のあの『バッタ食べてますけど、何か?』みたいな表情が好きだった。でもしばらくすると虫かごがうんこまみれになるので、色々考えて下にティッシュペーパーを敷いて交換すればいいことが分かってくる。卵を産ませたかったからオスとメスを同じカゴに入れて交尾させると、その後メスがオスを食べることを知ってなんとも言えない気持ちになったものだ。そういう原体験を通じて、子供心に女の怖さ命の儚さを知ったのである。

 

なんの話だっけ?あ、そうそうウルトラマンの話。つまり図鑑とか文学全集の間にそっとウルトラマンのDVD(ビデオじゃないのが時代の流れ)を差し込んでおくと、男の子は興味を持って見始める。そうして身振り手振りを真似てみせるようになり、『おとーさぁん、ぼくおおきくなったら、うぅとぁまんになぅー!』なんて言うだろう。そしたらお父さんになった僕は『そうかー、じゃあ大きくなったら、お父さんを助けてくれなー』なんて返すだろう。月日が流れて中学生になり、ウルトラマンなんてだせーなんつって腰パンしたりエロ動画見始めたりしてイキリだして、お父さんなんか一発で倒せるくらいの体力をつけるだろう。大学生になり一人暮らしをして、彼自身の夢を見つけ、彼自身の人生を歩むだろう。酒の味も知り、女の味も知り、それなりの成功と、それなりの挫折を味わうだろう。臆病な自尊心と尊大な羞恥心に苛まれる時もあるだろう。そしていつかふと、小さい頃みた憧れのヒーローを思い出す時が来るはずだ。でもようやくそこで君は気付くんだ。

 

 

 

 

"俺はウルトラマンにはなれなかったのだ" と。

 

 

 

 

お父さんもなれなかったんだよ。誰もウルトラマンにはなれないんだ。君が戦わねばならないのは、死してもなお不死鳥の如く蘇るバルタン星人でも、十字架にセブンを閉じ込めたガッツ星人でもない。君が戦っているのはゼットンよりも強くて、ヒッポリト星人よりも強くて、エンペラー星人よりも強い、そんな怪獣なんだよ。君はたった1人で、見えない敵と戦わなくちゃいけない。でも君なら大丈夫。ウルトラマンで『愛』を、セブンで『孤独な漢の背中』を、帰マンで『夕陽の美しさ』を、エースで『星の煌めき』を、タロウで『ユーモア』を、レオで『努力と根性』を、80で『涙の味』を知った君なら、きっと勝てるはずだ。きっと力よりも強い優しさを目に携えているはずだ。そしてボロボロの笑顔で戻ってきなさい。お父さんはいつもM78星雲から応援してるから。そして最後のデザートを笑って食べる君のそばに、僕はいたい。 

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なーんてことを考えながら江戸川CRを走っていたけど流石に飽きてきたので野田市辺りで20号線を走ることに。でも女の子が生まれたらどうしよう。僕は男兄弟だしいとこもみんな男だし女の子の育て方がわからない。ていうか女の子ワカラナイ。誰かおちえて。

 

 

20号線はとにかく何もなかった。茨城と栃木の何もなさは異常である。あるのは地平線と白菜畑とウンコの臭いである。だだっ広い関東平野をひとりで走ってると頭がおかしくなりそうだった。自転車旅という孤独の中では北関東の畑はなかなかに適さない。森とか木があれば、『あの向こうには何があるんだろう』と希望を膨らませられるからいいけど、ここにはそれがない。あの地平線が輝いているのは、どこかに君を隠しているから♪である。どっかに隠れてないかなぁ、と探してみるけど、あるのは地平線と白菜畑とウンコの臭いだけである。地平線はまだいい。白菜畑もまぁいい。農家の人が一生懸命野菜を育てていることを思うと感謝しかない。でもなんやねんウンコの臭いて。野菜を育てる肥料になるんだろうけど、それにしても時と場所を考えてほちぃ。まぁいいや。それにしても僕はたぶんこういう土地には住めないだろうと思う。田舎にも色々あって、田園地帯とか、山岳地帯とか、そういうとこには住めるけど、こういう平野の畑に住むには相当の精神的安定が必要だと思う。別に田舎を馬鹿にしてるわけではなくて、むしろ都会のアホみたいに人が多いとこより田舎に住みたいと思うけど、その種類の中には僕という人間に適さないものがあるということです。だからこそ、こういう所へ実際に行ってみて、そこに住む人々の生き様を目で見て肌で感じたい。自分とは違う他者とは、どれだけ寄り添っても完全には理解しあえないのは分かっているけど、それでも理解しようとする努力はしているつもりである。そうでなきゃ正月から寒さに震えながらこんな旅なんかしない。まるまると太った白菜を収穫する農家の人と、ギロッポンでパーリーナイ!してるのをインスタにあげるようなパリピが理解し合えると思いますか?それでも、そうだとしても、国も人種も違う程の隔離があっても、人は寄り添って生きねばならないのである。寄り添ってしか生きられないのである。他者理解というのはつくづくむつかちぃ。

 

 

ウンコ畑...じゃなかった白菜畑を抜けて、結城市あたりから35号線を行く。鬼怒川沿いを走る予定だったけど、この風の中川沿いを走るのは気が滅入るから、予定変更して市街地を走る。冬は日が暮れるのが早く、16時頃には暗くなり始めていた。夏なら18時過ぎまで走ってもまだ明るいのに...そして日が暮れ始めると急に気温が下がり始める。防寒対策はバッチリのつもりだったけど流石に手足の先が辛い。耳もちぎれるほど痛い。年末に発症した虫歯が痛い。何より心が痛い(ズキズキ)。相変わらず道は平坦で面白みがない。この旅で気付いた、というか今まで気付かなかったふりをしていたのかもしれないけど、自転車旅で辛いのは、峠でもアップダウンの激しい山道でもない。ただ平坦な道をひたすら漕ぎ続けるということだ。峠みたいなわかりやすい目標があればどれだけ辛くても頑張れるし、達成感も得られるけど、ただ目の前の平坦な道を惰性で進み続けていると、いつか知らない間に疲弊してしまう。心が硬直して柔軟性が失われてゆく。うん。みんなは大丈夫かな?かな?

 

真っ暗の中18時半ころ宇都宮に到着。節約のため快活クラブに泊まろうと思ってたけど、ちょっと寒さで滅入ってたので、4500円のビジホに泊まってゆっくりすることした。せっかく宇都宮に来たので、餃子を食べずに帰れない、というか餃子を食べなきゃ宇都宮に失礼だと思ったので、駅前のチェーン餃子店でメシ。餃子12個とライスのセットをペロリと完食。まぁ普通だった。そんな言うほどでもなくね?と思ったのはヒミツのアッコちゃん。帰り際にホテルに戻ろうとすると、鍵がない。どれだけ探してもない。ないものはない。まるで元から存在しなかったかのように。オーケー、僕の負けだ。『やれやれ』と僕はジムモリソンがドラッグにおぼれてぶくぶく太ってしまった姿を思い浮かべながらこうつぶやいた。This is the end, my only friend, the end♪…

 

まさか僕が落し物するなんて...僕は忘れ物はするけど、落し物するなんて考えられないと思っていたから、これは屈辱的だった。僕の人生の中で最もくちゅじょくてきな日でした(メラメラ)。しょうがないからホテルのフロントへ申告するとどうやら親切な人が拾って送り届けてたらしく、ことなきを得た。本当にこの国に生まれてよかった、日本人はまだまだ捨てたもんではないと思った。顔も名前も知らない人が届けてくれたのだけど、見えないつながりがあると思うとほっこりする。だから僕もここでお礼させてね。ありがとう。

 

今日は体力的にというか精神的に疲れたので、風呂に入って格付けの白石麻衣を見てかわええええええええってなったのでもう寝ることにした。かわええええ。おやすみ。かわえええええ。

 

 

本日の走行距離

だいたい120km